対ペルシャ戦役が終わり、ギリシャ各都市の団結も解けてそれぞれ動きがある。特にアテネとスパルタはライバル関係に戻る。スパルタはプラタイアの闘いで勝利に導いた自国の王のパウサニアスに対して疑念を持ち始める。『小人閑居して不善をなす』と著者は表現しているが、スパルタの監督官の制度が足を引っ張る感じだ。一年交代の市民から選ばれる監督官は政治的なことがわからない、スパルタの事しか考えていない小さな人物という描かれ方だ。パウサニアスを国外追放にしただけでは足りず、結局殺してしまう。著者はパウサニアスにかけられた罪は冤罪であったが、それを書き残した歴史家の書き方のせいで裏切り者とされてしまい、後世の評価が大きく下がってしまったと指摘している。
テミストクレスはこの政変に巻き込まれる形で追われる身となる。あちこち逃げ回るが、アテネとスパルタに見つかると移動するという生活を繰り返している。逃亡生活は協力者がたくさんいたようだ。サラミスの英雄であるしテミストクレスが海軍を作ったようなものだから海軍の中にもシンパはたくさんいただろうという。テミストクレスは最終的にペルシャ王国をたよることになる。ペルシャ王はクセルクセスからアルタ・クセルクセスに変わっていた。ペルシャ王はテミストクレスを受け入れマグネシア地方の長官に任命した。王はテミストクレスにあらゆることを相談していたようで『王に最も影響力をもつギリシャ人」といわれた。ギリシャの英雄がペルシャを守るという、なんとも不思議な状況が生れている。
ツキディデスのテミストクレス評は驚異の人という感じで絶賛だった。古代の民主政の国に英雄が生れるとこういう人生を歩むことになるとはなんとも皮肉だ。この人物が人気絶頂の時に政敵に対して手を打っていればこんなことにならなかっただろうに、そのままにしておいた為にあとから自分が追い出され、逃亡生活を経験するというのもなんとも皮肉なことだ。あげくアテネの敵の国に雇われ敵対することになる、手の内は全て知られている相手ではアテネ軍もどうしようもない。テミストクレスの行動は民主政を尊重するための矜持というものだろう。読了。
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