2021/9/4 「ギリシア人の物語Ⅱ 民主政の成熟と崩壊 塩野七生 新潮社」

2021年9月4日土曜日

ギリシャ 塩野七生 新潮社 歴史

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ギリシア人の物語II 民主政の成熟と崩壊    

増強されたペルシャ+スパルタ海軍と決戦する為作戦を立てるが、副官が作戦を狂わせる。アルキビアデスがいない間に決戦を挑み負けてしまう。このことがアテネ本国に伝わり、反アルキビアデス派が非難をすることでアルキビアデスは解任されてしまう。アルキビアデスは自分の所有地に引きこもる。一人を総司令官にして権威を集中させるべきではないという反対派の意見が通り、8人の指揮官が代わりに戦場に送り込まれる。再度海戦が行われ、混戦となり一応の勝利となるが戦死者も多かったらしい。8人の指揮官はアテネ市民から死刑判決が出る。2人は逃亡し6人が処刑される。こうなると市民会議が機能しているとはいいがたい。

ここでスパルタから和平の申し入れがあるが、アテネ市民は拒否してしまう。もはやアテネ市民は正常な判断が出来ない。戦争は継続と決まるが、アテネにはもはや指揮官になる人物が払底していたようで、人選に手間取る。その間にスパルタの非正規軍のリサンドロスが動き出しへレスポントス海峡をおさえる。アテネからすると小麦の輸入路が閉じてしまう、アテネは兵糧攻めにされてしまった。あわてて軍を送り出すが、帰港したとみせかけたリサンドロスの戦術に騙されて、港に戻ったところを急襲される。戦闘らしいことは何もなく負けてしまう。150隻のガレー船のほとんどが拿捕されるという結果に終わる。

さらにアルキビアデスが暗殺される。犯人はわかっていないがリサンドロスの指示ではないかと著者は書いている。リサンドロスはアルキビアデスが率いる軍とは絶対に対戦しなかった。アルキビアデスについては『アテネでは、ライオンの子を育てるべきではなかったんですよ。だが、育ってしまったからにはアテネのほうがライオンに、やりたいようにやらせるしかない。』というアリストファーネスの言葉を何度か紹介している。もう一つアルキビアデスは最後までやらせてもらえなかったとも書いている。4カ国同盟もシチリア遠征もその他すべて途中で指揮権が奪われて失敗に終わっている。アテネはやりたいようにやらせなかったので滅亡を速めたと思える。もう一つアルキビアデス自身も政治家ではなかったという事だろう。ライオンという面だけでは政治家はできないらしい。

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