2021/9/6 「ギリシア人の物語Ⅱ 民主政の成熟と崩壊 塩野七生 新潮社」

2021年9月6日月曜日

ギリシャ 塩野七生 新潮社 歴史

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ギリシア人の物語II 民主政の成熟と崩壊    

アルキビアデスが暗殺され、リサンドロスはデロス同盟参加都市を次々に制圧していく。小麦の輸入がストップしたアテネに難民が流れ込んでくる。そしてついにリサンドロスの海軍がアテネ目指して進軍してくる。陸上からはスパルタの陸軍が迫っていた。もはやこれまで、アテネは全面降伏する。アテネからの使者に対しコリントとテーベはアテネそのものを破壊してさら地にというところまで主張したようだが、スパルタは同意しない。特にスパルタ王パウサニアスはコリントとテーベの代表に対して今日のギリシャがあるのはアテネが先頭に立ってペルシャを撃退したからではないかと強くたしなめたようだ。アテネは存続を許されたが、かなり厳しい条件が付けられた。このあとアテネは民主政から寡頭政に変更させられ、軍船は12隻まで、領有していた基地や植民都市の放棄など、覇権国ではなくなってしまった。

アテネは同盟国を増やしながら領域を広げ過ぎたのではないかと思う。デロス同盟を結成したあたりで領域を広げることをせず、守りに軌道変更していればテーベやコリントとぶつからず、スパルタを引き出すこともなかったのではと思う。やはり成長路線では限界があるのだ。そもそもスパルタは1国独立主義であったわけだから放っておけば手を出してこないはずだった。他者に脅威を与えないためにはどうすればよいのか、それは成長戦略と相いれるものなのか、いろいろ考えさせられた。さらに、扇動者(デマゴーグ)という人々のやりきれなさはどうしたらよいのか。現代ではフェイクニュースなどの形になっていると思うが、これに対抗するためには民衆の意識が高くないと対抗できないだろう。ちょっと集団意識とかそういう方向に興味が向いた。

この本には書かれていないが、スパルタの天下も長続きせず、リサンドロスの下剋上をおさえることが出来なかった。テーベやコリントはさらに戦争の中心となってギリシャは混乱の時代となる。結果としてマケドニア王国の台頭、ローマの進出とさらに激動の時代が続く。コリントに至ってはローマ軍からさら地にされてしまうが、因果応報という感じである。次の3巻も楽しみだ。読了。

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