2021/12/26 われはロボット〔決定版〕アイザック・アシモフ 早川書房

2021年12月27日月曜日

SF アイザック・アシモフ ハヤカワSF

t f B! P L
われはロボット〔決定版〕

 2話目の『堂々めぐり』3話目の『われ思う、ゆえに‥‥‥』4話目の『野うさぎを追って』は共通の主人公で構成されている。いずれも開発段階のロボットがうまく動かないという内容でドタバタ喜劇感がある。ドタバタしてしまうのは例の『ロボット三原則』のからみで、作者自らが思考実験しているような感がある。

ロボット工学の三原則

第一条
ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
第二条
ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が第一条に反する場合は、この限りではない。
第三条
ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらねばならない。

というものがあまりにも有名な三原則だが、それぞれの話のなかで原則同士がコンクリフトを起こし、おかしなことになる。

2話目は第二条と第三条がコンクリフトしてロボットがまともに動作しなくなる。実は第一条に抵触するような事態が起きているのだが、ロボットはそれを知らない。そのため命令を実行することと、 自身の身を守ることとの間で揺れ動いてしまう。単純にコミュニケーションの問題ではないかという気もするが、自分の身を守る道具というのは使いにくいだろうなぁ。

3話目は単独で任務を遂行することを想定して作られたロボットが、自己の存在理由を考えて理由付けをした結果、人間の命令を聞かなくなる。そもそも人間に作られたということを認めない。しかし、ロボットなりの理由付けで任務は実行される。第三条が強化されてロボットが自意識を持ったら、人間のような不完全な存在から作られたということが信じられないというなんとも皮肉な内容だ。まぁしかし人間自体が思い込みで生きているということを考えると、人間が作ったものは人間の様になるという事なのかもしれない。ロボットと人間の間で繰り広げられる議論のああいえばこういうという感じがおもしろいが、別々の信念をもった人同士でも同じようになるのではないかと思う

4話目は1台のロボットが6台のサブロボットをコントロールするのだがうまくいかない。自分の指の様にサブロボットを操れるはずなのだが、なぜか危機的状況になると対処できずその場から離れてしまう。オチとしては指は5本しかないよねということで良いのだと思うが、やはり人間の限界ということを表したいのだと思う。このロボットも第三条が強化されているのかもしれない。人間の監督なしで臨機応変に宇宙空間で作業をさせようとすると、ある程度自意識のようなものが必要という考えなのだろう。

共通しているのは、第一条が発動されるような事態でなんとか解決に至っていることが救いだ。この話をしているキャルビン博士はまったく登場せず、時々言及があるくらい。ただ舞台はいずれも地球外の空間なので、本社で開発を行なっていたと思われる博士は当然出てこないのだろう。次の話には博士が出てくるようなので楽しみだ。

QooQ