8話目は人間にそっくりなロボットがロボットであることを隠して政治家になるという話。いままでのロボットは金属で出来ていて、体型も人型ではなかったようだ。それはロボット排斥運動が盛んだったことも関係しているようで、意識的にヒューマノイド形を避けていた部分もあるらしい。
『スティーブン・バイアリィ』という人物が市長選に出ようとしている。この人物がロボットなのではないかという疑いがあり、それを確かめてほしいとキャルビン博士のいるU.S.ロボット社に依頼が来る。バイアリィ氏は寝ないし、物を食べないのだという。ロボット三原則があるのだから見破るのは簡単だろうと思われるが、バイアリィ氏は敏腕の検事で人権を盾になかなか確認をさせてもらえない。
この話は2032年のこととして話されているが、それまでの間に生物工学の方も進歩があったようで肉体を製造することは可能な世界らしい。それにしても事故で両足、顔、声を失い妻も失ってしまった男が、ロボットの頭脳を手に入れそこから自分の代わりを作ろうとする、というのもかなり狂気がかっている話だ。その辺りがあまり描かれていないのは残念だ。その方向に話を進めていくとサイバーパンクな感じになっていたのかもしれない、当然これが書かれた当時にはサイバーパンクなどというジャンルは無かったが。アシモフのような60年代ユートピア的なSFに対する80年代のアンサー的な意味でサイバーパンク運動があったというようなことを『肉体のヌートピア』に書かれていたような気がする。
キャルビン博士はロボットであることを見抜きながらも、証拠がない為人間であるという結論を下す。市長に当選後にタネ明かしとして二人の会話があるが、そうか、その手があったかと思った。
それにしても、これだけ機能不全に陥っている世界を見ているとロボットに統治された方がよいのではないかと思えてくるが、アシモフの世界のロボットであればという前提が必要かな。完璧に三原則に則って自立して行動できるロボットでなければ、マルクス・ガブリエル氏の言うようにA・I独裁となってしまうにちがいない。とりあえずロボットが誰かの所有物であるうちは無理な話だ。
もう一編『スティーブン・バイアリィ』が出てくる話が続くので、さらに展開があるのだろう。
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