2021/12/29 われはロボット〔決定版〕アイザック・アシモフ 早川書房

2021年12月30日木曜日

SF アイザック・アシモフ ハヤカワSF

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われはロボット〔決定版〕

 9話がこの本の最後の話になる。基本『スティーブン・バイアリィ』と『スーザン・キャルビン』の対話で構成されている。二人はファーストネームで呼び合うような関係のようだ、良き相談相手になっているのだろう。

世界は国家が解体されて、4地区に分けられてそれぞれの地域に『マシン』と呼ばれるロボットが設置されている。それぞれの地域に人間の代表が立てられて行政を行なっているが、政策は『マシン』からの指示で行われている。この地区の分け方がどうも納得できないが、アシモフ氏としては合理的なのだろう。『スティーブン・バイアリィ』は世界統監となって二期目を務めている。

 世界中で小さな事故や計画の遅れが発生している。それが災厄の前兆ではないかと考えたバイアリィ氏は世界中を視察してまわる。相変わらずロボットに対する排斥運動が盛んで、そういった組織の関連も見えてくる。そのうえでキャルビン博士を招き相談をする。しかし、博士は『マシン』は全てのデータをもとに計画を立てているので、事故や遅れも計算のうちであるという。結果としてロボット排斥を行なっている集団の力が削がれて、『マシン』はより統治がしやすくなっているという。

たぶんこの経験がバイアリィ氏の引退となり、さらには自分が必要なくなったと判断し活動を停止した。社会的にはバイアリィ氏は人間であることになっているので死亡したということになっているが、ロボットとして自ら活動停止をおこなったのではないかとしている。自分よりよく統治できるロボットが出現すれば、必要がなくなるというのは道具としては当然だ。ただこの道具には個性があり意識があるように見える。

ロボット三原則は人間の倫理を映したものだというような発言が作中にあるが、すべての人間が守れないようなものを、存在の枷として与えられたロボットは気の毒だと思う。ロボットからすれば気の毒なのは人間の方かもしれないが。読了。

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