2021/11/16 未来への大分岐 マルクス・ガブリエル マイケル・ハート ポール・メイスン 斎藤幸平・編 集英社新書

2021年11月17日水曜日

マルクス・ガブリエル 斎藤幸平 資本主義 集英社新書

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倫理は自明のはずなのに、正しく実行されないのはなぜか。マルクス氏は情報の問題だという。しかし、斎藤氏は構造的な問題ではないかという。例えばプラスチックの問題は海洋プラスチックの事例などたくさん報道されているが、プラスチックを使用しないという方向になかなか進まない。これは産業構造などが使用し続けるようにしているのではという。資本家は『目下の利益のために行動するよう、彼らも駆り立てられている。そうしないと、他の資本家との競争に生き残ることができない』と斎藤氏が話すと、『構造的要因が存在している理由について別の説明』ができるとマルクス氏が話す。問題に対する理解が政治のところまで届いていないから禁止する法律が作られないのだという。政治家にせよ経営者にせよ方向性を決める責任者に対して理解を深めるよう専門家がもっと働きかけるべきだという。ドイツではこれで話が進むのだろうか?進むんだろうなぁ原発止めたしなぁ。市民の理解と運動が後押ししている部分が大きいと思う。

 しかし、便利なプラスチックをやめようという社会的な機運は日本ではなかなか盛り上がっているようには見えない。人間は都合の悪いことから目をそらす傾向がある。最善の選択肢を選ぶために熟議や試行錯誤をするのではなく、AIにまかせてしまうようになるのではないか?しかし、AIには倫理がないので判断が出来ないだろうという。それでもAIに任せたりするならば『精神無きサイバー独裁に乗っ取られてしまう』人間のことは人間が決めるしかない、不都合な事実から目をさらさず向き合うしかないのだ。『倫理的な問題を制度で解決するとしたら』という斎藤氏の問いに対し、『倫理的な判断をするための明確な基盤を「みんな」がもっているならば、間違いをおかす人は出てきません。いや、何人かはまだ間違うでしょうが、ごくわずかなはずです』とマルクス氏が答えている。やはり、倫理は制度化できないということか。

「みんな」が倫理的な力を身につけるために『新実在論は啓蒙主義を再起動するもの』であるという。この点において『ハーバーマスとは異なる』らしい、やばいハーバーマスはわからない。また、『ラディカル・デモクラシー』という言葉を使っているが、『通常のラディカル・デモクラシーの理解とは大きく』異なるらしい。シャンタル・ムフもわからん。いろいろわからんけど『理性と感情』の『対置は、そもそもおかしい』というあたりは前に読んだセドラチェク氏の『善悪の経済学』にもあったなぁ。マルクス氏は『人間動物』という概念を使っているらしい。感情のなかで合理的に考えている。『理性と感情は、基本的に同一物なのです』

 『事実を真摯に受け止めて態度調整するための哲学的土台を提供するのが新実在論です』『「ポスト真実」の語りというのは事実として偽であるだけでなく、規範的にも、誤っています。倫理的にも有害だし、政治的にも有害なのです』感想としてはシンプルで真っ当だと思う。放置されているSNSが「ポスト真実」の温床となっているという話も説得力があった。マルクス・ガブリエル氏の部分は読了。

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