2021/11/14 未来への大分岐 マルクス・ガブリエル マイケル・ハート ポール・メイスン 斎藤幸平・編 集英社新書

2021年11月15日月曜日

マルクス・ガブリエル 斎藤幸平 資本主義 集英社新書

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『新実在論』において『真実』がどのように決まるか。『一度、ゼロ地点に戻ったところで』『どのように他者の問題について、考え始めるべきなのか?』『私たちの価値観などをいかに考え始めるべきなのか』という問いを立てた時、『人はそれぞれに違った利害関心をもっている』ことに気付く。それぞれの見識について管理と調整が必要になる。管理する部分が『法の支配』ということになるが、法律は『倫理的な根拠に基づいていない場合、機能しません。それゆえ、倫理的領域と法的領域のあいだでの態度調整が必要となります』管理と調整が絶えず必要ということらしい。他者と争いになった時に法に照らして決着をつけるが、その基礎となるのは倫理であるとしている。では倫理とは何か。

 倫理とは『自明の事実』であるとしている。現代の問題は自明のものが『自明でないものとして提示され』ていることだという。これは『ポストモダニズムの原理』が働いているせいで『交渉のしようがないものが交渉の対象に変えられてしまっている』例として気候変動懐疑論が横行していることを挙げている。温暖化でコメがうまくなったとか言ってる場合じゃないのに、気候変動サミットで世界中の国がギリギリの議論をしているのに人ごとのような発言をしている。似た話がジジェク氏の『事件!』の中でもされていたなぁ。巧妙に倫理的に問題があることが問題ないかの様にすり替えられていくことを『道徳的真空』と書かれていた。

ただ、『すべての事柄が自明なわけでは』ない。情報や経験が少なくどうするべきか迷うこともあるが、それはやってみるしかない。やってみて違ったらやりなおすしかないようだ。ここから政治の話になる、政策が間違っていたら違う党に投票するということで政党政治が機能する。『有権者も政治家も、いつでも間違いをおかす。・・・そういう誤謬性を考慮に入れたうえで、私は政党政治の理念を完全に支持したいと思います』とマルクス氏が話している。日本は政党政治以前だよなぁ、せめて同じ考えの人で政党を作ってほしい、でないと選べないよ。

倫理の基盤については、カントやロールズの話をしている。簡単にいうと他人の視点になって考えてみるということで、倫理的でないかどうかわかるという。非常に素朴だが、真実だろう。『倫理においては、正統な不一致は存在』せず、意見が一致しないなら『どちらの側が間違っている』いろいろ読んでも行きつくところは倫理だなぁ。

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