2021/8/17 「ギリシア人の物語Ⅱ 民主政の成熟と崩壊 塩野七生 新潮社」

2021年8月17日火曜日

ギリシャ 塩野七生 新潮社 歴史

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ギリシア人の物語II 民主政の成熟と崩壊  

アテネはレスボスの反乱を鎮圧し、過酷な処置を行なった。同じころ同盟都市のプラタイアが陥落する。陥落前にかなりの住民を逃がしていたようで、200人のプラタイア市民と25人のアテネ兵が処刑される。ペリクレスが生きていたころ派遣された兵が、陥落時には25人になっていたらしい。降伏してきた者をやみくもに殺すということはそれまでのギリシャではあまりなかったことのようで、ギリシャ人は野蛮人のすることくらいに思っていたらしい。それがペロポネソス戦役以後は頻繁に起こるようになる。著者曰く『ギリシャ人は、自分たちで築き上げてきた価値観を、自分達で壊していった」としている。これは以前読んだジジェクの『事件!』の話を思い出した、ジジェク氏の本は権力者により巧妙に道徳観がすり替えられていくことに警笛を鳴らしている内容だが、ギリシア人の物語を読んでいるとリーダー不在の民衆が自らこれを壊してしまっているように感じる。なんにせよ道徳観が壊れていく時ほど注意が必要だ。

紀元前425年戦線が拡散する。それまでは直接対決しないようにしていたアテネとスパルタがぶつかる、海戦だった。規模としては小さい戦闘ではあったが、当然アテネ軍の勝利。スパルタの戦士150人が捕虜となる。アテネは礼を尽くした対応をし、スパルタが休戦の特使を送ってきた。ここで止めておけばよかったのに、扇動者クレオンが戦争続行を主張して休戦の話を蹴ってしまう。本当にこのクレオンという人物は先が見えていない、読んでいてため息が出てしまう。このことがスパルタ人にも変化をもたらし、さらにアテネが大変な目に合う引き金となる。

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