2021/8/15 「ギリシア人の物語Ⅱ 民主政の成熟と崩壊 塩野七生 新潮社」

2021年8月15日日曜日

ギリシャ 塩野七生 新潮社 歴史

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ギリシア人の物語II 民主政の成熟と崩壊  

衆愚政という状態について聞いたことはあった。それでアテネが衰退したという事も知っていたが、どういう事が起こっていたのかという事までは知らなかった。著者の書いている通り衆愚政が行なえたのも民主政治があったから。君主のいる国であれば暗愚な王と言われておしまい。さらに著者の指摘するのは『人類は・・・指導者を必要としない政体を発明していない』これもその通りだと思う。そして衆愚政の場合は、指導者が不安を煽るのが巧みであるということとしている。アテネには不安となる材料はなかった、冷静であれば。しかし、ペロポネソス戦役や疫病の流行が不安を煽り立てて指導者たちへの不満という形になるように煽り立てた人物がいた。

クレオンという人物らしい。この名前はこの本を読むまで知らなかった。 アテネで最初の先導者(デマゴーグ)とされているらしい。デマゴーグって扇動って意味だったんだ、知らなかった。ペリクレスの死後はクレオンと保守派のニキアスという人物が政界を2分して争っていたらしい。こんな状態でスパルタと戦争を続けなければならないとは・・・。さらに、レスボス島でも反乱が起きる。レスボス島内の親アテネ派と反アテネ派の抗争があり、反アテネ派が勝ったらしい。反アテネ派はスパルタに接近したらしいが、著者は陸軍国のスパルタに接近しても現実問題として援軍は来ないだろう、ほうっておいても立ち消えする反乱だったという。しかし、アテネとしてみればほっておくわけにもいかず、遠征軍を派遣する。時間はかかったものの反乱を鎮圧した、しかし、戦後処理で残酷な処置をした。著者は以前に反乱を起こしたサモス島の例と比較し、サモス島はアテネと最後まで運命を共にしたが、レスボス島はアテネが国難に見舞われたときに真っ先に離脱したと指摘している。

この過酷な処置を提案したのがデマゴーグのクレオンであった。読んでいるとこのクレオンという人物は先の見えない人物なんだなぁと思う。その時の感情や不満で大騒ぎする人物程やっかいだと思う。

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