2021/8/19 「ギリシア人の物語Ⅱ 民主政の成熟と崩壊 塩野七生 新潮社」

2021年8月19日木曜日

ギリシャ 塩野七生 新潮社 歴史

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ギリシア人の物語II 民主政の成熟と崩壊  

スパルタはアテネに負けたことで、内向きになり正規軍を出さなくなる。代わりに非正規軍を送り出す。スパルタの正規軍というのは2人いる王のどちらかが率いて、スパルタ市民のみで構成されている軍のこと。この非正規軍はブラシダスという人物が率いて700人のヘロット(農奴)に武装させたもの。それにペロポネソス半島出身者の1000人を加えて1700人だった。ブラシダスという人物についてはよくわかっていないようでスパルタ市民であることは確かなようだが生年も年齢もよくわかっていない、この時40代だったようだ。この1700人がカルキデア地方というから、以前マケドニア王の扇動で反アテネになった地方に送り出された。

送り出されたといってもギリシャ半島を縦断するような形でいくしかない、海上はアテネの領域である。アテネの勢力圏のテッサリア地方を通過しなければならないが、1戦もせず、通過するだけだからと言ってその地方を通ってしまった。カルキデア地方についても戦わない。アテネから離れるよう説得し、中心的な都市のアンフィポリスを開城させてしまう。著者も書いているが、まるでアテネ人のようなスパルタ人だ。スパルタでどうしてこのような人物が育ったのだろう?この時アテネからの援軍を率いて現地にいたのが後に歴史家となるツキディデスだった。まったく戦うことなく負けてしまった彼は、本国に戻った後20年の国外追放刑となってしまう。ツキディデスはこの経験から歴史を書き始めることになる。

しかし、失敗したものをいちいち国外追放にしていたらリーダーがいなくなってしまうんじゃないか?カルキデア地方の諸都市もスパルタ人に説得されるほど分担金を払うのが嫌だったのか。やはりこの同盟という一見対等な仕組みは難しい。双方がうまみを実感できないと続かない。もしこの同盟がなかったら・・・ということは考えられなかったのだろうか?

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