2022/4/18 はじめての聖書 橋爪大三郎 河出文庫

2022年4月19日火曜日

キリスト教 河出文庫 橋爪大三郎

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キリスト教が成立したので旧約聖書の神話世界も経典として残っているが、そうでなければ他の神話と変わらなかったのかもしれない。ただ記録を残す傾向がある文化と記録などあまり気にしない文化があることは確かで、中国などは記録を残す典型的な文化だろう。強者が歴史を改ざんすることもあり、ユダヤのような虐げられた民族がその神話を保持し続けたことが驚異的な事なのだと思う。

イエスがキリスト(救世主)となる「うねり」というか流れのようなものがよくわかるように書かれている。そういう意味では洗礼者ヨハネがキリストとなっていたかもしれないし、タイミングのようなものも大きかったのではないかと思える。

イエスが斬新だったのはたくさんある戒律を「神を愛せ」「自身を愛するように隣人を愛せ」という事に集約したことなのだと思う。「自分を愛するように」と但し書きがあることから「自分を愛してよいのです」という風に書かれている。「神が自分を愛してくれているのだから」ということが自分を愛する根拠となっているのだなぁ。このあたりがキリスト教の強みだよなぁと思う。自分を愛するための根拠を持つというのは、なかなか大変なことだと思う。

 また、今のキリスト教が成立する影響としてギリシャ文化との接触という点も挙げられている。まぁ、その前からエジプトに行ったり、バビロニアに連れていかれたりといろいろな文化と接触があってその時々にユダヤ教にも変化が起こり、最終的にキリスト教となる。他文化にもまれて成立したのだなぁということがよくわかった。

そしてパウロという人物がキリスト教に貢献した度合いが大きいこともよく分かった。はじめはキリスト教徒を迫害している側の人物だったのに、キリストの幻を見て改宗したという。ユダヤ人ではあってもローマ市民権を持っている人物が改宗して布教に努めたことはかなり大きかったのだろう。ローマ文明の普遍的な下地があったので、浸み込めば広がるのも早かったのだろうなぁと思う。

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