2021/12/9 昨日までの世界 文明の源流と人類の未来 上 ジャレド・ダイアモンド 日経ビジネス人文庫

2021年12月9日木曜日

ジャレド・ダイアモンド 社会学 日経ビジネス人文庫

t f B! P L
昨日までの世界(上)―文明の源流と人類の未来

第二部の『平和と戦争』の後半の戦争の部分の続き。人間はどうしてこれほど好戦的なのかという考察。いろいろ例をあげて生得的に平和を好むとか好戦的とかということはありえず、環境因子のほうが大きいと結論付けている。

環境要因という事であれば、なにが戦争を起こす動機となっているか。戦争の勝者が何を得ているかを考えると、いろいろな戦利品を獲ていることがわかる。しかし、当事者たちに話を聞くと『報復』が目的であるという。『報復』の連鎖が始まるきっかけはなにか?という問いに対しては答えはまちまちとなる。

もっとも頻繁に出てくる動機は土地の獲得ということになる。しかし、これも当てはまらないケースがある。伝統社会での戦争では占拠した土地を放置する場合もあるらしい、近隣に住人がいることが不安の要素となるケースもあるという。そういえばガリア戦記の中にゲルマン人は集落の周りを荒れ地にしておくというようなことが書いてあったような、と思い出した。

どうも土地ということでもないようなので、勇敢に戦うことで子孫をのこすチャンスが増えるのかという検証をしている。こういうことを調べた人がいるのもすごいね。しかし、まちまちの結果が出ているようで、どうも勇敢ならモテモテという事でもないようだ。

ということで戦争の原因はまちまちでこれだというようには決められない。まぁ考えてみれば当たり前の話だ。傾向としては伝統社会では戦争を終わらせることが困難だが、 国家がある社会では個人の思いはこぼれてしまうという話で終わっている。著者が幼少期を過ごした1940年代のアメリカでは反日感情が強く、志願して戦争に行ったアメリカ人男性が多かった。しかし『真珠湾攻撃から4年も経たないうちに、われわれアメリカ人は、日本人を憎むのはやめるようにと告げられた』なので、著者は伝統社会の報復の気持ちが理解できるという。遺恨というのはずっと残るものなのだと思った方がいい。かなり親日家というイメージがあるが、著者の気持ちの中にこういう感情があるのは驚いた。

法や倫理規範があるおかげで現代では復讐の連鎖のようなことは起きない。ニュースで死亡事故や事件が起きた時に残された家族の様子をみていると、自分であれば耐えられるだろうか、と思うことがある。『自明の事実』という意味では復讐したいという感情は人間の自然なものと言えるのではないか、それを抑える倫理規範は人間本来のものというよりは社会の中で進化してきたものであるというべきものだろう。であれば、倫理規範を『自明の事実』という訳にはいかないのではないかと思った。とりあえず、この本はここまでにしておく。

QooQ