2021/12/5 昨日までの世界 文明の源流と人類の未来 上 ジャレド・ダイアモンド 日経ビジネス人文庫

2021年12月5日日曜日

ジャレド・ダイアモンド 社会学 日経ビジネス人文庫

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昨日までの世界(上)―文明の源流と人類の未来

境界を越えて移動することがほとんどなく、知識としても近隣の事しか知らない伝統的社会では交易はどのようにおこなうのか?伝統的社会では貨幣はなく物々交換が基本で、貝殻や壺が仲立ち品として使用されることはあるらしい。ウェイトが置かれているのは、必要なものを交換して手に入れるという側面よりも、部族間の関係強化のために交易をおこなっているという側面の方が強いようだ。互酬的な贈与という形をとることもあり、これも必要の為ではなく関係の強化の意味合いが強い。

交易する双方がプロでないということも現代社会とは違う。交易だけをして生活している人がいないということだ。当然利益を出そうとかという発想はない。双方が納得できる等価交換でなければ人間関係が壊れてしまう。

生活必需品ばかりでなく、奢侈品も取引されている。クロマニョン人の遺跡から石英製の槍先が発見されているという。ぜいたく品がほしいという志向は人間がもともと持ち合わせたものなのだろう。

自給自足が不可能な小さな島の住人は交易で生計を立てるようになるケースもあるが、重要度は部族間の関係性の強化の部分だろう。アマゾンの2つの部族の話が面白かった。ある部族Aが近隣の部族Bから陶器を入手していた。Aでは『自分たちは陶器をつくる方法を知らない』としていたが、AとBの同盟関係が崩れると、Aの部族では陶器の『製法を思い出した』という。

こういった同盟関係や関係性の強化が、いざ何かあった時にセーフティーネットとなるらしい。そういった互恵関係のために厳密な損得勘定抜きで取引が行われる。現代ではセーフティーネットといわれてもなにか思いつくだろうか。病気や怪我で入院すれば保険が下りるくらいしか思いつかない。それも普段から保険会社にお金を払っていないとならない。それはそれで皆から集めたお金でやっているのだろうけど、そういうことで利益を上げている会社というものには違和感がある。特に昨今のコロナ対策で棄民政策のような事例を見ると、行政って頼りになるのか?日頃からコミュニティ等とのつながりを意識しておいた方がよいように思う。

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