2021/12/22 文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの 下巻   ジャレド・ダイアモンド 草思社文庫

2021年12月23日木曜日

ジャレド・ダイアモンド 社会学 草思社文庫

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文明崩壊 下巻

16章は今までのページのまとめ的な内容となっている。特に深刻な環境問題として12に分類して挙げている。

  • 森林、湿地、珊瑚礁、海底の破壊
  • 魚介類の乱獲
  • 生物多様性の喪失
  • 土壌の劣化
  • 化石燃料依存
  • 真水の枯渇
  • 光合成の限界
  • 毒性化合物による環境汚染
  • 外来種問題
  • 温室効果ガス
  • 人口増加問題
  • 生活水準の見直し

上記の内容が上下巻の紙数を使って書かれてきた。じっさいどれだけの影響が出ているのかを著者が暮らしているロサンゼルスでの生活を描写している。それにしても20キロ移動するのに1時間以上かかるとは・・・『平均的なロサンゼルス市民は、年に三百六十八時間、つまり丸十五日を、職場との往復に費やす』しかし、自動車という乗り物を手放すことができるだろうか?

そして、以下のような環境問題に対する反論に対して反論をしている。

  • 環境と経済の兼ね合いが肝心
  • 科学技術が問題を解決してくれる
  • ひとつの資源を使い尽くしたら、同じ需要を満たす別の資源に切り替えればいい
  • 世界の食糧問題というものは存在しない。食料はすでにじゅうぶんにある。われわれはただ、その食料を必要な場所へ届けるための輸送問題を解決すればいい
  • 個人の寿命、健康、財産などの常識的な指標で見れば生活条件は向上し続けている。・・・崩壊が忍び寄っている気配はない
  • 過去に何度、環境保護論者たちの大げさな破滅の予言がはずれてきたことか。もうそんなものには踊らされない
  • 世界の人口増加率は落ちてきているのだから、人口問題はおのずから解決しつつある
  • 世界は増えゆく人口を無限に吸収できる
  • 環境への配慮は、先進国の気楽な金持ちだけに許される贅沢で、貧困にあえぐ第三世界の住人にそういうものを押し付けるべきではない
  • 環境問題が絶望的な結末を迎えるとしても、それは遠い将来のことで、自分は死んでいるから、真剣に考える気になれない

いろいろなことをいう人がいるものだと感心する。世界は人口が増えても無限に吸収できるなどという事を真剣に唱えていた人物がいたことに驚く、数学のマジックだろうか。

著者としては過去から学び破滅への道を歩まないでほしいという願いを込めて書いたそうだ。本書の初出が2005年で、文庫化されたのが2012年だった。当時としてはかなり刺激的な内容だった。ほぼ10年経ったがどうだろう、変わっているのだろうがあまりにもゆっくりな気がする。もうすでに破滅への道を歩き始めているのかどうか。技術が進歩してハイブリッド車が普及しても、SUV車が流行して結局ガソリンの消費量は増えてしまったそうだ。こんなことをしていたら破滅なんだろうな。

最後にアンコールの滅亡が描かれているが、とりあえずここで読了とする。

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