2021/12/15 文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの 下巻   ジャレド・ダイアモンド 草思社文庫

2021年12月16日木曜日

ジャレド・ダイアモンド 社会学 草思社文庫

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文明崩壊 下巻

第四部では『将来に向けて』と銘打ちどうすれば危機を回避できるかということを考えている。著書が教鞭をとっているカリフォルニア大学ロサンゼルス校で生徒から出た質問『最後に残った一本のヤシの木を前にした島民が、それを切り倒しながらどういう言葉を吐いたと思うか』これはイースター島での樹木の乱伐で社会が崩壊した例を話した時に出たそうだが、どうしてそうなってしまうのか?という事が書かれている。『集団の意思決定を失敗に至らしめる要因をロードマップの形』で検討している。

先ずは問題が生れる前に予期が出来るのか。オーストラリアやグリーンランドに植民した人々は故国の常識を持ち込み、自分たちがしていることで何が起きるか予期できなかった。これは仕方ないだろう。しかし、著者は人間の忘れっぽさも指摘している。1973年にオイルショックを経験して『燃費の悪い車を敬遠していたが』現代の車は不必要に大きい車を『嬉々として』受け入れている。ほんとにデカい車に一人で乗ってるのを見ると腹が立つ。

次は実際に問題が起こり始めた時に感知できるか?これに失敗してしまうのは三つの理由があるという。一つには問題が起こり始めても感知できない。科学的な実証をすれば可能だが、見ているだけではわからない。わからないならしょうがないよな。

二つ目は管理責任者が遠くにいる場合、これも気候変動に限らずありがち。職場の問題なども現場を知らない管理者が頓珍漢なことをしてしまうという感じか。

三つ目がもっとも多いのではという、変化が緩やかすぎてわからない。近年の気候変動についてもいまだに異論をいう人々がいる例を挙げている。著者の経験で久々に故郷に帰った時に氷河が消えてしまっていたことに衝撃を受けるが、地元の人々は徐々に進行していることをそれほど気にしていない。

イースター島のヤシの木は何世代もかけて少なくなっていったので、最後の木を切り倒す人は、実はそれほど気にかけていなかったかもしれないと書かれている。日本の江戸時代の森林保護は一気に皆伐され、風景が劇的に変わったので保護するきっかけになったのだろうとしている。徐々に変っていくものに対応できないというのは環境だけでなく、現代の倫理に関しても言えることだろう、ジジェク氏もすり替わっていくことに注意が必要だと説いていた。

ロードマップの第三地点は問題を感知した後、解決のために行動を起こす時に失敗する例。もっともありふれているのは合理的行動であるという。最近読んだ本の影響もあるだろうが、『合理的』ということのうさん臭さ、これもホモ・エコノミクスか。いいかげん『合理的』という言葉は『功利的』と言い換えたほうがいい。これは経済的な事ばかりではなく、権勢欲も含め近視眼的な判断がコミュニティを滅亡に導いている。これに対する方法は何らかのブレーキが必要だろうという。上からにせよ下からにせよ一部の利益享受者の暴走を法律なりの決め事を作り抑えるしかないとしている。

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