2021/12/13 文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの 下巻   ジャレド・ダイアモンド 草思社文庫

2021年12月13日月曜日

ジャレド・ダイアモンド 社会学 草思社文庫

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文明崩壊 下巻

第三部では『現代の社会』と銘打ち現在進行している危機をはらんだ社会を紹介している。

先ずアフリカのルワンダの例を取り上げている。この章はルワンダで行なわれた大量虐殺の原因を考察している。これを読むまでは『ツチ族』と『フツ族』の対立で起きた、という理解だった。しかし、根っこにあるのは土地の生産力と人口増加の問題で『マルサスの最悪の筋書きが正しかったと思えるような事例』となっていたらしい。

マルサスに関してはセドラチェクの本の中にも出てきていたなぁ。肥料等の進歩により生産力がマルサスの予想より向上したおかげで予測は回避されたとされていたが、アフリカではこれが起きてしまった。

もともとはなかよく同居していてかなり通婚もされていた部族が、植民地政策で明確に分けられた。少数派だった『ツチ族』が植民地政府としてベルギーから権力を持たされ、独立後『フツ族』が『ツチ族』の政権を打倒して大虐殺を行なった。ほんとにベルギーの植民地政策は何を読んでもお粗末で、他の本を読んでも実にしょうもないことをしたなという感想を持っている。

しかし『フツ族』が同じ『フツ族』を虐殺した例もあり、飢饉や食糧不足から土地争いが頻発して社会不安が増大していた。そのタイミングで『ツチ族』から『フツ族』へ政権交代があり、大虐殺が起きたのだろうという。

次は『ハイチ』と『ドミニカ』の例を挙げている。小さな一つの島に二つの国があり、言語も民族も異なるという。これも植民地政策のせいで、読んでいても実に腹立たしい。

『ハイチ』に関しては読んだ限りでは絶望的。『ドミニカ』に関してはトップダウンの環境政策が功を奏して繫栄している。この『ドミニカ』のトップダウンについては強烈な独裁者が出て、軍を使ったかなり厳しい規制を行なっている。この政策を行なった『バラゲール』という人物については調べてみようと思った。

このあと中国とオーストラリアについても紹介されている。中国は『巨大な振り子』と評されて、オーストラリアは『最も非生産的な大陸』とされている。

共通しているのは樹木の伐採、地力の低下、環境汚染等が人口増加や産業振興で起きる。それにどのように対処するか、民間の環境団体や市民組織からのボトムアップ方式と政府が行なうトップダウン方式か。ドミニカでは両方が見られ、中国ではトップダウンで行なうことで政権が変わると振れ幅が大きいという。民衆が生活していくだけで手一杯のところでは長期的な視点を持てず、気が付いたら木を全部切ってしまったといった事態を防ぐにはどうすればよいのかということか。教育も必要だろうし、倫理規範がしっかりしていることも大事だろう。それが出来なければ『バラゲール』がやったようにトップダウンでやるしかないのだろうか。

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