上巻読了。読んでいると時々主人公が子どであることを忘れてしまう。しかし、多出するいじめの話は子供の話だなぁと思い出させる。建付けはSFだが人間性が深く洞察されている話だと思った。
上巻の最後の方に地球で暮らすエンダーの兄弟の様子が出てくる。兄のピーターは攻撃性が強すぎ、姉のヴァレンタインは優しすぎそれぞれ軍の訓練学校へ招致されなかった。能力的にはエンダーに劣らない二人だが、特に兄のピーターは残虐なところがあるということで一般生活上でも問題があるとされていたようだ。エンダーが旅立った後ノースカロライナに引っ越している、自然の中で暮らすことで状態の変化が期待されたのだ。
ピーターはうまく自分を隠すことができるようになっており、周りに順応しながら独自の計画を練っている。この世界ではロシアが再びワルシャワ条約機構を締結して世界を2分しているらしく、世界が対立している状態の時にバガーの襲来を受け一時的に休戦しているらしい。そのロシアが世界制覇にむけて再度動き出したことをピーターが察知する。風雲の兆しに対してネットワーク上で言論を形成して世界戦争を回避しようと計画する、本音としてはその過程でリーダーとして頭角を現したいのだ。兄弟の会話の中で「ヒトラー」や「ビスマルク」など歴史上の人物についても言及されている。ピーターが行動を起こすためにはネットのアカウントが必要だ、なんといっても12才の子供でしかない。そのためには妹のヴァレンタインの力で両親を説得することが必要だ。ピーターは敵の弱点を見抜くことが上手でも、相手を説得することは苦手らしい。ヴァレンタインはピーターを嫌っている、今も全く残虐性が変わっていないことを知っていながら協力することを承諾する。ヴァレンタインもエンダーと同じく自分の中にピーターのような攻撃性があることを感じている。
著者のSF的思考ではロシアがふたたび覇権主義的になるとみていたようだ。書かれたのが1985年であったのでこういう予見となったのだろう。まさか中国が台頭してくるとは思わなかっただろう。ネットワークについての予見も子供用のアカウントや匿名アカウントということも1985年に書かれたものとしては先見的だ。
兄弟の目論見は順調に進行し、一定の影響力がある匿名アカウントを作成することに成功した。そんな時に訓練学校の責任者グラッフ大佐がヴァレンタインの元にあらわれる。エンダーに手紙を書いてほしいと依頼する。エンダーは自分の中にピーターのような攻撃性があることに戸惑っている。そのことが軍の首脳部にはよくわからず、姉に助けを求めてきたのだ。ヴァレンタインは軍のやり方に怒りを感じながらも手紙を書く。エンダーは手紙を受け取りヴァレンタインまで利用する軍に怒りを感じながらも、自分の中のピーターと折り合いをつけていく。
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