2021/10/17 善と悪の経済学 トーマス・セドラチェク 東洋経済新聞社

2021年10月18日月曜日

トーマス・セドラチェク 経済学 資本主義 東洋経済新聞社

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善と悪の経済学

 NHKの「欲望の資本主義」で著者を知り読んでみたいと思っていた本。経済学はアダム・スミスから始まったとされているが、通貨ははるか昔からあった。これに関して何の考察もなかったのかというとそんな事は無い。一分野として独立する前は哲学や倫理学の中に納まっていたが、今や数式を使い科学の方に立ち位置を変えて元居た場所を見下している。このありかたに疑問を持ち、物語や歴史を読み解きと直して経済学についての知見をさがすという試みの本らしい。数式を駆使してお金を増やすことばかりにかまけていてる経済学ではなく、真の豊かさに導くことが経済学の役割と書かれている。

人間は物語で思考するようにできている。経済学も数学モデルを使っていても物語を使って理解しようとする試みである。物語である以上、善悪があるという。善いということは「よい暮らし、よき人生」にみちびく物語である。ところが経済学者は『規範的な判断や意見を差し控えるよう訓練されている』らしい。しかし、経済学自体は『規範的な領域に属している』という、これは矛盾ではないか。そもそも経済学という物は実学的なものなのではないのか?お金を世の中にうまく回すにはどうすればよいのかという事なのだと思っていたが、そういうものではないらしい。

また、経済学が描き出すモデルは規範的なものであるので、けして現実の世界を写しだしているものという訳ではないらしい。あるべき姿を論じているものであるという、そういう意味で規範的なのだ。こうなるとなんだか胡散臭くすらある。

ここで著者の問いが立てられる。『善悪の経済学は存在するか。善は報われるか、それとも経済計算の外に存在するのか。利己心は人間に生来備わったものか。交易に資するなら利己心を正当化できるか。』というものだ。

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