2021/8/27 「ギリシア人の物語Ⅱ 民主政の成熟と崩壊 塩野七生 新潮社」

2021年8月27日金曜日

ギリシャ 塩野七生 新潮社 歴史

t f B! P L

ギリシア人の物語II 民主政の成熟と崩壊  

シチリア遠征がアテネの命運をさらに落としていく。スパルタに4カ国同盟が負けたあとで止めておけばいいのにと思う。しかし、覇権国家をやっていくということは助けを断ることが権威の失墜になるのだろう、断れないのかもしれない。地方の小都市がいざこざを起こして、強国に助けを求めるという形で戦争に引き込まれていく。現代だと大国の代理戦争という図式になるのだろうが、当時だと大国が乗り込んでいくことになる。アルキビアデスは賛成、ニキアスは反対だった。市民集会ではアルキビアデスが勝ち遠征が決まる。このあたりは唯一ニキアスの意見の方が正しいと思えるところだが、ニキアスは市民を説得できなかったようだ。良い悪いは結果論だとしても、カルキデアの問題も解決しておらず、ペロポネソス戦役も終わっていない。どう考えても戦場を広げる時期でないのは明らかだと思うが、市民を説得できないで決定は出来ないのは民主政だから、こうなるとリーダーがどうとかではなく市民の冷静さや判断力が試されているとしか思えない。

134隻のガレー船に5千百人の重装歩兵、騎兵が30騎、軽装歩兵が1300人という陣様だったらしい。率いて行くのはアルキビアデス、ニキアス、ラマコスの3人。出陣間際にアルキビアデスとその仲間がアテネ市内のヘルメス神像の首を落としたという嫌疑がかけられる。その捜査中であったが出陣していくことになる。

シチリア到着後アルキビアデスの作戦でシラクサ以外の都市を味方につける。順調のようだったが、先の事件で出頭命令がアルキビアデスに届く。アルキビアデスは戦場を離れアテネに連行される。このあと残されたアテネ軍は散々な負け戦をすることになる。ニキアス、ラマコスも含めほとんど全滅する。アテネ軍が壊滅したのはスパルタの非正規軍のためであった。スパルタはシラクサからの援軍要請に応える形でギリッポスという人物を送り出した。著者はこの戦争にかなりページ数を割いている。この人物が活躍し、2年後にアテネ軍は完全に敗北し、『生き延びて帰国できたアテネ人は1人もいなかった、と言われている』いよいよアテネも窮していく。

QooQ