2021/8/23 「ギリシア人の物語Ⅱ 民主政の成熟と崩壊 塩野七生 新潮社」

2021年8月23日月曜日

ギリシャ 塩野七生 新潮社 歴史

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ギリシア人の物語II 民主政の成熟と崩壊  

アテネにも人材はいた。アルキビアデスという青年だった。著者がそれぞれの能力ごとに点数を付けているが、なかなか高評価だ。知性と説得力はペリクレスに並ぶという評価はすごい。例によってアルクメオニデスの一門の生まれでペリクレスを親代わりにして育ったという。といってもペリクレスは親らしいことができるようなタイプではなかったし、忙しくてかまっていられなかったようだ。しかしペリクレス邸に集まる人材との交流が知性を育てたのかもしれない。なんといってもソクラテスがいたのだ、そして当時の多くの若者と同じようにソクラテスのとりことなっていく。アルキビアデスはソクラテス仕込みの弁舌で政界デビューしてすぐに『四カ国同盟』なるものを提案する。

ここで初めて知ったことなのだが、ペロポネソス半島の中にペロポネソス同盟に参加していない都市がたくさんあるらしい。かといってアテネ側の都市でもなく中立の都市があるとは知らなかった。そんな中立の3都市を引き込んでアテネを含めて4都市で同盟を結ぶことになる。スパルタが黙っていないはずだが、スパルタの弱みをついて黙らせる。スパルタはブラシダスに付けたヘロット(農奴)上がりの兵士の処遇に困っていた。一度兵士となった農奴は二度と農奴に戻らないと決めていた。スパルタ市民として処遇することを要求されるが、スパルタの首脳陣としては受け入れられない。スパルタの身分制の維持が出来なくなってしまう。結局辺境に基地を作りそこに住まわせることにしたのだが、その基地をアテネ側に認めさせる代わりにスパルタは4カ国同盟を認めるしかなかった。 実に鮮やか、確かにペリクレスに匹敵するかもしれない。

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