2021/8/21 「ギリシア人の物語Ⅱ 民主政の成熟と崩壊 塩野七生 新潮社」

2021年8月21日土曜日

ギリシャ 塩野七生 新潮社 歴史

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ギリシア人の物語II 民主政の成熟と崩壊  

ブラシダスの活躍でスパルタ本国が下剋上を心配して動き出す。スパルタという国はいかにして現状を維持するかということが最優先の国。スパルタからアテネに対して休戦の申し出がされる。この時ばかりはクレオンがいくら扇動してもアテネ市民は休戦を選ぶ。だがブラシダスはこの休戦を不服として抗戦を止めない。ブラシダスも目下のところ作戦がうまくいっていて欲が出たのかもしれない。とはいえ軍は1700人しかいないので作戦がうまくいくほど守備範囲が広くなり1700人ではカバーできない。アテネも再度軍を送り出す。1万1千の軍が相手ではブラシダスも太刀打ちできない。この時アテネ軍を率いていたニキアスはスパルタ本国を追い詰めたくないという理由で最後まで追い詰めず帰国する。だがアテネ市民はそれを理解せず、さらにクレオンが扇動したので再度遠征軍を送る。この時初めてクレオンがストラテゴスに選ばれた、と書かれているので逆に驚いた。いくら自由にものが言える社会であるとはいえ、扇動ばかりして政治家として動いていなかったとは、どういうことだ?

そのクレオンが率いて行った遠征軍は、たいした戦闘もないまま総大将が双方討ち死にすることで終わる。『クレオンの唯一の功績は、ブラシダスを道連れにして死んでくれたこと』と書きたくなる気持ちもわかる。

一応決着がついた形となったので、スパルタとアテネは休戦条約を締結する。『ニキアスの平和』と呼ばれる条約により、スパルタは捕虜となっていた150人の帰還をさせる。さらに以前の海戦でスパルタが失った土地も返還される。アテネはカルキデア地方の一部の都市を除き傘下に戻すことが出来た。一見うまくいっているように思えるが、スパルタの意を汲み譲歩した形となった。今までのアテネのリーダーがいたらこのようにはならなかったのではと思う。繁栄を極めていたアテネには人材がいなかったのだろうか?

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