2021/7/7 「事件! 哲学とは何か スラヴォイ・ジジェク 河出書房新社」

2021年7月7日水曜日

ジジェク 河出書房新社 哲学

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 『第三の駅 自然化された仏教』前章の終わりで坂口安吾の話から仏教へと展開する。

ジェイムズ・アッシャーというプロテスタントの牧師が書いた『新旧約聖書の年表』の話からはじまる。アイルランドのカトリック信者が迷信深いのでプロテスタントの牧師が聖書の歴史的事実を年表にしてみた、というはなし。同じキリスト教徒でもそんな風に感じるのか。でも世界の創造が紀元前4004年という結果になってしまったらしい。当時説得力があったのだろうか?

 そんな話からヴァージニア・ウルフの話を経て遺伝子工学の話題になる。ヴァージニア・ウルフの作品は読んだことがなかったのでわからない。ジジェク氏の知識量はすごいな。

遺伝子工学などの知見が深まるにつれて人間の本性が変わってきているという。これは前章までの言い方でいくと理解の枠組みが変わるという例になるだろう。クローン技術が広まれば生殖に意味は無くなる、遺伝子の変更も人為的に改変可能。人間関係の基本的なところから大きく変わってしまう。

アメリカのDARPA(国防高等研究計画局)の取り組みの話(これもけっこう怖い話)から、SEXから解放されるという器具のはなし、そして仏教の話へとつながる。

仏教徒が世界的には増加しているらしい。仏教はグローバル資本主義に対抗する手段のようでいて実は資本主義を補完すると指摘している。精神的健康の外見を保ちながら資本主義のダイナミズムに参加するというのはどういうことだろうか?思考停止しているということだろうか?

脳科学の例が取り上げられている。『自立した自由な主体としての〈自己〉の概念は幻想にすぎない』という知見はたしかに仏教っぽい。ここでの問いは『自己が存在しないという事実を生きることが出来るか』ということで、仏教の悟りが自己の非在を理解することであることから検証される。悟りに至る為には道徳的な行いから始め、生活を見直し修正していく。意識も良い方向に変えていく、やがて悟りに至った時に偽りの自己から解放されたときに何が起きるのか?解放されたのだから道徳からも解放されるのか?結局主体からは逃れられないという結論に至る。 これについては他の仏教の本でも取り上げていたなぁ。とりあえずジジェク氏は別のアプローチを探す。

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