2021/7/30 「ギリシア人の物語Ⅱ 民主政の成熟と崩壊 塩野七生 新潮社」

2021年7月30日金曜日

ギリシャ 塩野七生 新潮社 歴史

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ギリシア人の物語II 民主政の成熟と崩壊

 ペルシャの脅威がなくなったことで『デロス同盟』の意味が変わってくる。ペルシャからの防衛というのが目的だった同盟なのにアテネがペルシャと講和することで、同盟に参加している理由がなくなってしまう。アテネの海軍力があっての防衛なのでペルシャだけでなく海賊からも航海が守られることはありがたいが、分担金の負担と軍船を出す必要があった。脅威がされば負担したくないと思う都市が出てくる。特にメガラという都市は『デロス同盟』を抜けて『ペロポネソス同盟』に参加するという。『ペロポネソス同盟』はスパルタ主導の対アテネの為の同盟である。アテネは『デロス同盟』を脱退した都市を力で攻略する。このことがギリシャ中の非難を浴びてしまう。コリント主導で『ギリシャの今後の平和を討議する会議』が招集されアテネを抑え込もうとする。コリントは『ペロポネソス同盟』に参加しており、アテネとは利害がぶつかっていた。

このあたりを読むとアテネがかなり帝国主義的な行動をしていると思う。いくら民主政の国だからと言ってもろ手をあげて認めるわけにはいかない。しかし、他国よりも早い発展をしていることの要因は民主政にあるとも思う。強国をみんなで集まってなんとかしようという感じは現代も変わっていない。しかし、世界史で言うと古代にこのようなことをしていたというのは驚きである。このペルシャとの講和はデロス同盟対ペルシャという形であったならば同盟から抜けることで庇護がなくなるというようにできたのかもしれない。アテネのスタンドプレーのような気もする。

結局この会議はペリクレスがいいように仕切ってしまったようで、コリントは苦汁を飲まされた形になった。著者曰くスパルタとアテネの間に取引があったのではないかとしている。ペリクレスとスパルタ王のアルキダモスが気が合う友人だったという事も大きい。

コリントのアテネに対する敵愾心がどんどん育っていく。難しいことなのだろうけれども敵は作らないにこしたことはないが、繁栄の絶頂にある時にはわからないのかもしれない。アテネの対外進出拡大路線があとあと裏目にでてしまうことを考えると、現代で言うとバブルをソフトランディングさせるような方向に舵を切っておいた方がよかったんだろう。現代でも難しいことなので、この時代ではなおさらだと思う。

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