2021/6/6 「肉体のヌートピア ロボット、パワードスーツ、サイボーグの考古学 永瀬唯 青弓社」

2021年6月6日日曜日

クロニクル 永瀬唯 青弓社

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第3章はサイボーグの話。人体の一部が機械に置き換わることをサイボーグと定義する。両大戦後義手義足の人が増えるなか、どこまで身体は置換可能なのだろうか。当時のイメージとしては脳さえ残っていれば意識や精神が保たれると考えて、身体のほとんどが脳となってしまった火星人や脳を機械の身体に移植するSFが書かれている。しかし、最近の研究では身体から脳への働きかけなどが明らかにされ、脳だけでどれくらい個人が保てるのかという気がしている。

後半はロボトミー手術についての話題から、脳に刺激をあたえることでコントロールをするという事と全体主義とのかかわりについての言及がある。オーウェルの「1984」はこうした考え方に反対するために書かれたらしい。今でこそ問題があるとされているが、ロボトミー手術のようなものが大々的に行われていた時代が、ほんの少し前にあったという事実は忘れてはならないだろう。今の世の中で当たり前とされていることが、たかだか30年後にはなんという非人間的なことをしていたのかと思い出されるときが来るかもしれない。

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