2021/6/24 「ギリシア人の物語Ⅰ 民主政のはじまり 塩野七生 新潮社」

2021年6月24日木曜日

ギリシャ 塩野七生 新潮社 歴史

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ギリシア人の物語I 民主政のはじまり

ソロンの次はペイシストラトスの登場。ソロンの改革は実行されたが、アテネの混乱はまだ続いていた。資産で階級分けをして旧来の階級を取り払ったのは良かったが、現状の追認に過ぎない面があったという事だろう。さらに海外に持っていた資産については考慮されていないので富裕層は隠然たる勢力を持ち続けていたようだ。

ペイシストラトスはソロンの遠縁になるらしい、ソロンが帰国した後見いだされたようだ。アテネの目の前にあるサラミス島を領有しようとして担ぎ出されたらしい。この領有に関しては戦争ではなく狡知で成し遂げたという印象である。サラミス島をめぐり対立するメガラという都市に対して内紛をあおったり、スパルタを引き込んで説得したりという感じだ。10年もかかったが領有に成功し『サラミスのヒーロー』ということになった。ペイシストラトスは30歳になっていた。

人気者になった若者を旧来の勢力が放っておかない。ペイシストラトスはいったん引き下がることにしてアテネを離れる。旧来の勢力は豊かな土地を所有している旧来の貴族系の人々と、沿岸部に基盤を持ち交易で力を付けた人々がいた。なんだかんだで結局10年も離れることになった。カルキデア地方となっているがトラキアの近くという話なのでかなり遠くまで離れている。ここで鉱山開発をしたり人脈を作ったりしていたようだ。

10年後ペイシストラトスは1000人の傭兵部隊を率いてアテネに乗り込みクーデターを起こす。アテネ軍は兵が戦闘放棄したらしい。結局問題解決されていない状態だったわけだから不満もたまっていたのだろう。アテネに無欠入城し、旧来の勢力は逃げ出したようだ。大急ぎで逃げ出したので子供を置き去りにした人々がいたようだ。ペイシストラトスはその子供たちを友人が統治している島に送りアテネと同じ待遇を与えたらしい。

ペイシストラトスは地主が不在になった土地を貧しい農民に小分けにして分け与える。これで旧来の勢力の1方は力を失う。さらに土地をもらった農民から直接税をとることにする。これは今までなかった。税といえば軍務だった訳だから異例のことである。そのお金を国家の運営費に充てるということで、軍務につくにしても武装の費用が負担だった階層の人々は楽になる。

さらに亡命生活で培った人脈から交易の販路を広げ開放。ますますアテネは繁栄していく。交易で力を得ていた階層からすると販路を独占できなくなったということで力をそがれたらしい。

その他通貨を確立した。鉱山開発が得意だったのが幸いした。他国との関係は良好。さらに特産品の開発。

ペイシストラトスはクーデターで政権をとったので後世の歴史家からは評判が悪いらしい。ただし良い結果を残しているので『快適な専制者』と評価されている。

ただ、あまりにも急成長すると周囲から警戒されるのは仕方がないことだろう。ペイシストラトスの晩年スパルタが『ペロポネソス同盟』を結成している。

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