ダリア・ミッチェル博士の発見と異変 世界から数十億人が消えた日 キース・トーマス 竹書房文庫

2022年9月27日火曜日

SF キース・トーマス 竹書房文庫

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ダリア・ミッチェル博士の発見と異変 世界から数十億人が消えた日

 ジャケ買いでした。鏡像文字とか反応してしまう。しかし、面白かった。

異星人?とのファーストコンタクトもので、これほど異星人が出てこない作品もないだろう。電磁パルスが地球に向けて放射されて、その影響で人類が変調をきたすというアイデアは他になかったのではないか。その変調もプログラミングされた電磁パルスにより遺伝子レベルで変わってしまう。遺伝子レベルで書き換えられた人類の一部は超常的な能力に目覚めその後忽然と消えてしまう。異星人?と同じレベルに「上昇」して別次元に移動してしまったのだという。

内容としてはこういう感じなのだが、取材したものをまとめたという形式をとっているのも臨場感があってよい作りだ。その際にいろいろな人物からの聞き取りで、「上昇」という事象が多面的に描かれている。フェイクニュースや陰謀論を流しているサイトの管理者の目線とか、大統領の目線とか一章ごとに語り手が変わるため、短編集を読んでいるような感じにもなる。人物だけでなく、現象が起き始めたときの混乱、各国の対応などがリアルに書かれいる。ネットワーク社会らしく最初の症状が現れSNSで拡散して大混乱が起き陰謀論が流布されさらに混乱していく様子は読み応えがある。淡々と書かれているのもいい演出になっている。

さながら分断していく社会に対する絶望感、希望が見いだせない感じが現代社会ともつながるような気がした。異星人の介入で今の体制を結局一度オジャンにしないと立ち直れないのだろうかと読みながら思ったりもした。

こういう本だからハヤカワや創元推理文庫あたりに並んでいるのだろうと思いきや、竹書房である。これは侮れない、いつも本屋であまり注意して見ていない場所かもしれない。 キース・トーマスという著者も聞き慣れない、竹書房侮れない。

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