2021/6/27 「ギリシア人の物語Ⅰ 民主政のはじまり 塩野七生 新潮社」

2021年6月27日日曜日

ギリシャ 塩野七生 新潮社 歴史

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ギリシア人の物語I 民主政のはじまり

第一次ペルシャ戦争はアテネの勝利で終わった。とは言ってもペルシャに占領されたギリシャ人が住んでいる地域はそのままになっている。ペルシャで内乱がおきている間に何とかしたいところだ。ミリティアデスは翌年も将軍に選ばれてエーゲ海の島々の制圧に向かうがうまくいかない。かえって負傷してしまい、アテネに戻ると告発されてしまう。勝っていればこその人気が落ちて、期待を裏切ったと思われると手のひらを反すように扱われてしまう。民主政というのはこういうところが難しいと思う。

戦時中は協力していたアリステイデスとテミストクレスも、戦争が終わると対立する。アリステイデスは対ペルシャ穏健派で外交で解決しようと考えている。テミストクレスは対ペルシャ強行派でペルシャとは戦争するしかないと考えている。テミストクレスはミリティアデスをなんとか救いたいと考えたがかなわなかった。

テミストクレスは『陶片追放』を使って政敵を追い出す。陶片追放は市民集会で参加者6千人以上で過半数の投票があれば成立する。年に1回しかできないことになっている。追放が決定すれば10年間アテネには戻れない、資産はそのままだが帰ることは許されない。

テミストクレスの目標はアテネが200隻の軍船を持ちペルシャから守ることだったが、対ペルシャ穏健派は「そんなことをすればかえってペルシャを刺激してしまう」と反対していた。

陶片追放で政敵を追い出したテミストクレスは200隻の軍船を建造する。しかもテミストクレスのアイデアを盛り込んだ新型軍船だ。船底に石を積み込み重い船にした、敵船にぶつけた時に威力を発揮する船だ。

テミストクレスは後世評判が悪い。陶片追放という制度を使って政敵を追い出すという所業が原因だ。この制度は独裁者になりそうな人物を追放することを目的として作られたのだが、使い方によっては危ういということは考えられる。テミストクレスの場合は独裁者になることは考えておらず、目前の危機に対応するためになされたことであった。民主政という政体を尊重しており、その弱点もわかっていたということなのだと思う。民主政の価値が共有されていることが独裁者を出さないための大事な点なのだと思う。

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